バスフィッシングを語る上で、外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)の話を避けて通ることはできません。
平成17年に施行されたこの法律、ご存知の方も多いと思いますが、まずはその概要について改めて確認します。
外来生物法とは
正式名称を「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」といいます。
《目的》
特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資するために法律が作られました。
《規定》
- 問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定する。
- 特定外来生物の飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制する。
- 特定外来生物の防除等を行う。
簡単に言うと、「外国から来る、日本人にとって悪い生き物を排除しよう」という法律です。
特定外来生物とは
この法律で規制や防除をする、特定外来生物とはなんでしょうか。
外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定した生物です。
いい意味でも、悪い意味でも、生態系に影響を与えることのない、外来生物は存在しません。
外来生物の中から、人の活動に悪影響を与えると国が判断して、指定する生物が、特定外来生物です。
バスフィッシングへの影響
外来生物法の施行によって、バスフィッシングに多大なる影響がもたらされました。
いい影響なら喜べますが、悪影響なので、バスフィッシングを愛する者として、放ってはおけません。
バスが規制や防除の対象となる、特定外来生物に指定されてしまいました。
つまり、法律上、日本に存在してはいけない生物となったのです。
バスがいなくなったら、バスフィッシングは成立しません。
日本でバスフィッシングはするな、と言っているようなものです。
ちなみに、「防除の指針」なるものでは、バスはブルーギルと一緒に、「オオクチバス等」と表現されちゃってます。
外来生物法の問題点
この法律には多くの問題点があります。
まずは目的の部分。
生態系の保護や生物多様性の確保についてうたわれていますが、生態系に悪影響を与える最大の要因が、人間の活動であることは明白です。
生命誕生以降、人類以上に、他の生物を絶滅に追いやった生物がいるでしょうか。
悪影響を与える生物を排除したいなら、人間を排除するべきです。
生態系の保護をしたいなら、他にやるべきことはあるはずです。
目的から生態系に関する記述を削除し、「人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資する」とするべきではないでしょうか。
特定外来生物の指定について。
全ての外来生物は、生態系に影響を及ぼします。
よって、特定外来生物に指定するかどうかは、影響の程度や、人に害を与える度合いによって判断されることになります。
影響の程度は誰が決めるのでしょうか。
また、その生物が害を及ぼすかどうかは、人によって、また、時代や状況によって異なります。
そのため、特定の人間による判断で指定する決定方法には疑問があります。
バスは特定外来生物にふさわしいか
ここでは、皮肉をこめて「ふさわしい」という表現をさせてもらいます。
現在国によって指定されている特定外来生物について、全ての生物に対する知識は私にはありません。
他にもふさわしくない生物がいるかもしれませんが、ここではバスに限定して話をします。
今一度、特定外来生物の定義について
「外来生物であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるもの」
です。
バスがこの定義に該当しているか、一つずつ検証します。
《外来生物か》
確かにバスは外来生物です。
大正14年に赤星鉄馬氏によって、アメリカから芦ノ湖に持ち込まれたのが最初だと言われています。
《生態系へ被害を及ぼすか》
被害かどうかは分かりませんが、影響は与えます。
しかし、繁殖可能な全ての外来生物は、生態系に影響を与えます。
《人の生命・身体へ被害を及ぼすか》
及ぼしません。
バスは人を食い殺したりしません。
また、噛みついたりもしません。
ハンドランディングするときに、親指にひっかき傷ができることを国は問題にしているのでしょうか。
《農林水産業へ被害を及ぼすか》
水産業に対して被害を及ぼした可能性は否定できません。
魚食魚であるバスは、漁の対象となっている小魚を捕食します。
バスの繁殖と、漁獲高の減少が時系列的に相関しているデータがあるなら、バスが一因であると言えると思います。
このように、定義に該当している部分、していない部分があります。
なお、特定外来生物に指定するか、しないかは、定量的な判断ではありません。
ある数値が〇〇以上だから指定するという話ではないのです。
定量的な判断ではないということは、政治的な判断が介在したということです。
バスが日本に存在しなくなることはいいことか
生態系という大義名分を振りかざせば、全ての外来生物がいなくなることは、いいことになります。
ただし、人間あっての法律であるので、人の活動にとっていいことかを考える必要があります。
バスフィッシングが大好きな人にとっては、いいことであるはずがありません。
しかし、バスフィッシングがどんなに楽しいか、をいくら説明しても、それでは感情論の域を出ないため、相手にしてもらえません。
外来生物法の施行によって、バス業界は衰退しました。
それでも、まだまだバスフィッシングをする人はたくさんいます。
琵琶湖にも毎日バスボートが浮かんでいます。
休日になると、こんなにバスボート持っている人がいるんだと、思うほどです。
どんだけお金をつぎ込んでいるのでしょうか。
もちろん、バスボートに乗らない人も、他の出費を抑えてでも、好きなバス釣りにはお金を掛けているはずです。
日本のバスが絶滅し、バスフィッシングをする人が日本からいなくなり、バス業界で循環しているお金や経済活動が無くなることが、本当にいいことだと言えるのでしょうか。
バスが絶滅したときに、日本の内水面の漁獲高は、かつての状況に戻るのでしょうか。
百歩譲って、戻ったとして、水産業は復活するのでしょうか。
バス業界が消滅することの対価として、つりあうのでしょうか。
バスの駆除はできるのか
琵琶湖では現在、外来生物法に基づいて、バスやギルの駆除が行われています。
税金を投入し、漁師の人へ依頼してやっています。
今年度は、バスやギルの駆除量が激減しているとのニュースもありました。
駆除量が減ったのはなぜだろうみたいな話も出ていましたが、駆除しているのだから減って当然ではないでしょうか。
では、このまま駆除を続ければ、琵琶湖からバスはいなくなるのでしょうか。
無理だと思います。
私の知る限りでも、既に30年以上前から、琵琶湖全域でバスは生息していました。
バスは琵琶湖の生態系に完全に組み込まれた存在です。
特定の魚だけを、その生態系から駆除するなど、できることとは思えません。
それこそ、某テレビ番組ではありませんが、「琵琶湖の魚全部殺す」みたいなことでもしない限り無理でしょう。
ちなみに、バスが日本各地に広まっていった時期に、湖や池で爆発的にバスが増えて、入れ食い状態になるような現象が各地で起きています。
ある水系においてバスの生息数が減少した場合、一個体あたりの餌の量が増えるために、再びバスが爆発的に増えるという説もあります。
バスの繁殖力を考えたときに、現在生息していない水系へ新たにバスを持ち込むことは反対です。
しかし、既に生態系に取り込まれたバスを駆除することは、効果に疑問がある中で税金を投入してまでやることでしょうか。
漁獲量が減少した漁師さんの収入を、補填するための事業ならば異存はありませんが、それならば駆除を前面に押し出して欲しくはありません。
現実的な対応を
バスを駆除することは、日本全体にとっていいことなのか。
また、バスを本当に駆除できるのか。
今の状況は、バスフィッシングをする人、バスを駆除する人、どちらも不幸なのではないでしょうか。
個人的には、レジャー税みたいな形式で、バスフィッシングを楽しむことへ、多少なりとも負担をすることも構いません。
それを財源として、環境保護や、漁業関係の事業を実施してはどうでしょうか。
その代わり、リリース禁止などという訳のわからない規則は廃止していただき、害魚などという引け目を感じることなく、バスフィッシングを楽しめればと思っています。
理想論ではなく、現実的な落としどころがあるはずです。
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