はじめての船舶検査

バスボート

はじめに

私のバスボートが進水してから3年が経過して、このたび船舶検査(中間検査)を受けることとなりました。
初めての経験で分からない事も多く、これから船舶検査を受ける人の参考となるように、その内容や手続きについてまとめてみました。

なお、今回の記事は一般的にバスボートと呼ばれているボートについてのものです。
具体的には、全長20ft前後で、100~300馬力の船外機を搭載し、河川限定で使用するプレジャーボートに関するものです。
規格や用途の異なるボートの場合は、必ずしもこの記事と検査内容が一致しないため、詳しくは日本小型船舶機構のHPを参照してください。

船舶検査とは

船舶検査とは船に対する公的な検査制度で、自動車でいう車検に該当します。

事故や遭難を未然に防ぐために、船としての機能がきちんと備わっているかを定期的に検査して、その船が検査に合格していることを証明する書類「船舶検査証」を発行します。
検査に合格しなければ、その船は航行することができません。

バスボートは、総トン数20t未満の「小型船舶」に該当し、その検査は日本小型船舶機構が実施します。
検査には3種類あり、その時期と内容は以下のとおりです。

検査の種類検査の時期内容
定期検査6年毎初めて船舶を航行させるとき、または船舶検査証の有効期間が満了したときに受ける
中間検査定期検査の中間年定期検査と定期検査の間に受ける簡易な検査
臨時検査随時改造、修理や設備の交換などをおこなったときに受ける
船舶検査の種類

「船舶検査証」の有効期間は6年なので、定期検査は6年毎にあります。
定期検査後3年経過すると中間検査を受けます。
同じボートに乗り続けた場合、定期検査と中間検査が3年毎に繰り返されます。

通知が届く

船舶検査の時期が近くなると、日本小型船舶機構の担当支部から船舶検査の案内通知が届きます。
琵琶湖のマリーナにボートを保管している場合は、大津支部から送付されます。

船舶検査の案内通知

通知には以下の書類が入っています。

  • JCIからのお知らせ
  • 船検の申請と準備について(申請書の記入の仕方や法定備品一覧表など)
  • 船舶検査申請書
  • 自主整備点検記録
  • 検査手数料の払込用紙(ゆうちょ銀行用)
  • 返信用宛名台紙(裏面は船の位置略図)
  • 申請書送付用封筒

中間検査を受ける時期は、定期検査を受けた日から3年経過した日を挟んだ前後3ヶ月です。
私のボートは、新艇の定期検査が平成30年12月に実施されているので、令和3年9月から令和4年3月の間に中間検査を受けるようになっていました。

検査を受ける期間が6ヶ月あるので、割と余裕を持った対応が可能です。

車検との違い

車検の場合、点検整備も含めてディーラーや整備事業者などの専門店に依頼するのが一般的でしょうか。

新艇購入時の船舶検査(定期検査)は、ボートを購入したディーラーに依頼して行いました。
そのため今回の中間検査も、ボートディーラーやマリーナなどの専門業者に依頼して行うものと思っていました。
もちろん専門業者へ依頼することもできますが、よくよく調べてみると、専門業者はあくまでも代理で船舶検査に立ち会うだけということが分かってきました。

検査は船を保管してあるマリーナに検査官が出張して行います。
そして、通常はその船の所有者が船舶検査に立ち会います。

ただし、船舶検査は平日の特定の曜日に行われるため、仕事の都合などで所有者が立ち会えない場合、第三者である専門業者に立ち会いを依頼することもできます。

法定備品の確認

船舶検査には自分が立ち会うことが判明しました。
次に、検査前の準備として、法定備品の確認を行います。

もちろん、新艇購入時の定期検査を受けた際に、必要な備品は揃っていたはずです。
しかし、使用期限が決まっている物もあるため、不具合がないか等を事前に点検します。

湖や川などの平水区域を航行区域とするバスボートの場合は、次の装備が義務付けられています。

名称備考
係船ロープ2本
救命胴衣定員と同数船名又は船舶番号又は所有者名を表示
救命浮環1個船名又は船舶番号および船籍港又は定係港を表示
信号紅炎2個使用期限が切れていないこと
消火器1個赤色バケツでもよい
ビルジポンプ1個バケツ(消防用と兼用可)でもよい
音響信号器具1個いわゆるホーン
舷灯1対両色灯でもよい
停泊灯1個マスト灯、船尾灯と兼用可
工具1式ドライバー1組、レンチ1組、プライヤー1個
プラグレンチ1個
法定備品一覧

注意すべきは次の2点でしょうか。

  • 救命胴衣、救命浮環に必要な表示があるか
  • 信号紅炎は3年半で使用期限が切れるため検査の前に買替える

ちなみに、信号紅炎は一定の条件下でなら携帯電話で代用できるとの話もあります。
ただ、信号紅炎は4,000円程度で購入でき、携帯電話には無い遠方から視認できるという効果があるため、ボートに備えておいた方がいいと思います。

船体表示の確認

船舶番号等、船体に表示すべきものを確認します。

項目表示場所内容
定期検査済年票右舷と左舷定期検査をした年
船舶番号右舷と左舷「3桁‐5桁」の番号
船籍港右舷と左舷都道府県名
次回検査時期指定票右舷と左舷次回検査の年と月
最大搭載人員任意ボート定員の人数
救命胴衣格納場所格納場所の近く「救命胴衣格納場所」の表示
救命胴衣着用方法格納場所の近くイラスト入りの着用方法
船体に表示すべきもの

どれもステッカーで船体に貼り付けるようになっています。
「定期検査済年票」~「次回検査時期指定票」が剥がれている場合は、日本小型船舶機構から再交付を受けて貼り直しましょう。

最大搭載人員と、救命胴衣格納場所のステッカーはネットで購入できます。

検査手数料の払込

検査申請書を提出する前に、検査手数料を払い込みます。

ボートの長さ、定員、そして定期検査か中間検査によって手数料は異なります。
船検の案内通知には、ゆうちょ銀行で使用できる払込用紙が入っています。
払込用紙には、所有するボートに応じた手数料が印字されているので、それを郵便局に持っていけば簡単に手数料を支払えます。

ゆうちょ銀行以外の金融機関で支払う場合は、日本小型船舶機構の支部で払込用紙をもらえるようです。
みずほ銀行、三井住友銀行を利用するなら、日本小型船舶機構のHPから振込用紙をダウンロードできます。

今回の検査手数料は、14,900円でした。

ボートやエンジンの点検整備

ボートの自主整備点検を行うことで、船舶検査の一部が省略されます。
当日の検査をスムーズに進めるためにも、検査前に点検整備を行いましょう。
点検結果については、案内通知に同封されていた「自主整備点検記録」に記入します。

点検項目は大きく分けて4つです。

項目整備内容点検内容
船体上架整備外観に異常がないか
操舵設備外観に異常がないか
作動状態は良好か
排水設備外観に異常がないか
作動状態は良好か
エンジン解放整備重要部品の状態は良好か
その他整備外観に異常がないか
作動状態は良好か
オイル交換をしたか
キルスイッチは良好か
点検整備項目

船体の上架整備、バスボートは毎回トレーラーに上架しているので何の問題もないのですが、常時水上に停泊しているボートの場合は大変です。

エンジンは、少なくとも検査前1年以内に、専門業者による整備を受けましょう。
「自主整備点検記録」には、1年以内にエンジン整備したかどうかを、記入する欄があります。

私は、エンジンの稼働100時間毎の点検をボートディーラーに依頼し、その整備が終わったタイミングで船舶検査の申請を行いました。

船舶検査申請書の記入

法定備品の確認、船体表示の確認、検査手数料の支払い、ボートの点検整備、これらが終わったらいよいよ船舶検査申請書を記入します。

所有者の住所・氏名やボートの情報など、事前に判明していることは既に申請書に印字してあります。
記入するのは、申請者の住所・氏名、検査を受ける日、検査を受ける場所(マリーナ名)、立会人について等です。

申請手続きを業者に依頼するなどで、ボート所有者と検査申請者が異なる場合は、所有者からの委任状が必要となります。

案内通知には検査を実施する日の予定表が入っているので、そこから希望の日を選んで申請書に記入します。
事前に検査日を電話等で予約する必用はありません。

書類に不備があったり、たまたまその日に検査希望が集中したりしなければ、基本的には申請書に記入した日が検査日となります。

船の位置略図の記入

案内通知のなかには、返信用宛名台紙が入っています。
その裏面は、マリーナのどこに検査するボートがあるのか、位置略図を記入するようになっています。

検査当日、検査官がマリーナで迷わないように、マリーナ内の船の位置略図を記入します。
私の場合、google mapの航空写真とにらめっこしながら、記入しました。
ある意味、ここが一番苦労したかもしれません。

申請書類の送付

検査予定日の1週間以上前までに到着するように、日本小型船舶機構の担当支部へ申請書類を送付します。

送付用の封筒は案内通知に同封されています。
切手は必要な額を自分で貼りましょう。

申請書送付用封筒

送付する書類は次のとおりです。

  • 返信用宛名台紙(裏面は船の位置略図)
  • 船舶検査申請書
  • 自主整備点検記録
  • 振替払込受付証明書(検査手数料払込の証明書)

検査当日の時間について

検査日は申請の際に選べますが、時間までは指定できません。

当日の時間については、検査予定日の前日(土日及び祝祭日を除く)お昼前くらいに、日本小型船舶機構から連絡が入ります。
検査予定日が月曜日の場合は、前の週の金曜日に連絡があります。

検査当日

検査当日は、時間に余裕を持ってマリーナへ行き、準備をします。

ボートカバーを外し、法定備品をデッキ上に並べます。

法定備品を並べた様子

検査官の印象を良くするためにボートの汚れを拭きます。

使ったことのない停泊灯をセットします。
レンジャーの停泊灯はポール状で、船尾のコネクタに固定する仕様です。
琵琶湖で夜間航行することはないので、普段はストレージのロッドを入れるところにしまっています。

ほぼ時間どおりに検査官が到着しました。
まずは「船舶検査証」と「船舶検査手帳」を検査官に渡して検査開始です。

検査の様子

検査官は目視でエンジンや船体をチェックします。
法定備品が揃っているか、必要な表示が船体にされているかどうかをチェックします。
最大搭載人員のステッカーと、救命胴衣着用方法のステッカーがどこに貼ってあるかを尋ねられました。
音響信号器具(ホーン)が鳴るかどうかの動作確認と、停泊灯が点くかどうかの動作確認を行いました。
エンジンの状態について聞かれたので、「昨日も乗りました。良好です。」と答えました。

以上で検査終了です。
検査開始から終了まで、15分も掛かりません。
検査官曰く、「ボートが綺麗なので問題ないでしょう。」とのことでした。
そして次のボートを検査するため、検査官は車で去っていきました。

船舶検査証の受け取り

「船舶検査証」と「船舶検査手帳」は一旦検査官が預かります。

新しい「船舶検査証」等は受取人払いで郵送してもらうこともできます。
私は、日本小型船舶機構の大津支部を確認したかったので、事務所まで取りに行くことにしました。

検査の翌日中には書類が出来上がるとのことで、検査の2日後に大津支部を訪問しました。

日本小型船舶検査機構 大津支部

日本小型船舶機構の大津支部は、陸上自衛隊大津駐屯地の近く、びわこマリーナの隣にあります。
事務所は、建物の入り口を入って階段を上がった二階です。

建物入口

受付で名前を伝えると、すぐに新しい「船舶検査証」と「船舶検査手帳」が出てきました。
受領書にサインをして受け取り完了です。

今回は中間検査なので、「船舶検査証」は変更ありません。
「船舶検査手帳」に中間検査を行った日付が新しく記入されました。
そして「次回検査時期指定票」のステッカーが2枚交付されました。

交付されたステッカーをボートに貼って、はじめての船舶検査はすべて完了しました。

あとがき

事前準備はいろいろ必用ですが、船舶検査自体は思っていたよりも簡単で拍子抜けしました。

船舶検査とはこんなものなのでしょうか。
「自主整備点検記録」の内容がきちんとしていたからでしょうか。
今回が中間検査だったからで、定期検査ではもっと厳しく確認されるのでしょうか。
それとも納艇からまだ3年で、ボートの見た目が綺麗だったからでしょうか。

確かに、動くかどうか不安になるようなボロさだったら、実際にエンジンを掛けてみてくださいとか言われるのかもしれません。
やはり見た目は大事ですね。
何はともあれ、無事に検査が終わりました。

<結論>
検査当日、1日だけ時間を確保できれば、誰にでも船舶検査は受けられます。

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